愛知県依存症治療拠点機関(薬物依存症)啓発サイト

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家族への支援

家族への支援

薬物依存症による問題で、家族が悩んだり疲れていませんか

薬物使用に問題のある当事者に薬をやめるよう説得したり、約束をさせたりしても効果は長続きしません。また薬物使用に絡んで起きた問題の尻拭いをしたり、借金の肩代わりをしたりしていると、当事者が問題の深刻さに気づけず、かえって回復の妨げになることがあります。

薬物依存の問題について最初に相談するのは当事者ではなく、困っている家族がほとんどです。依存症者が家庭内にいることで、悪い影響をうけて、日々胸を痛め、関わることで苦しみ疲弊していきます。

家族にできることは、当事者に巻き込まれないようにすること、家族自身の悩みを相談できる相手を見つけることです。

ご家族だけで問題を抱え込まず、まずは相談をしてみませんか?

薬物依存症とは?

依存症といってもアルコール・薬物・ギャンブルなど依存する対象によって捉えられ方は違ってきます。
では、薬物の依存症は社会の中ではどのように受け止められているのでしょうか。

依存症の対象 物質依存(覚醒剤・大麻・危険ドラッグ・シンナー・処方薬・市販薬など)
当事者の年代 若者 ~ 中年
現れる問題 社会的逸脱(薬物犯罪・非行・退学・家出・自傷・ひきこもり・売春・借金・ 失職・DV・暴力団・逮捕・受刑など)
物質や行為への社会の許容度 許されない
主な対応場面 司法
相談者(家族) 親がほとんど
社会情勢  依存症に対しては病気ではなく性格や素行、親の育て方の問題などの偏見がみられます。また、違法薬物使用者は犯罪者として社会から排除される風潮にあります。処方薬への依存に関しては社会の認識が薄いのが現状です。

※特定非営利活動法人 ASK  特定非営利活動法人 全国薬物依存症者家族会連合会(やっかれん)資料より引用

依存症からの回復のために

当事者が適切な治療を受け、NA(※1)などの自助グループによって支えられ、薬物を使わない生活を送ることで、依存症からの回復は可能です。しかし、当事者は自分の問題を認めない(否認)ことが多くあります。
まずはご家族が依存症という病気について学び、適切な対応を取ることが、当事者の回復のきっかけとなります。
家族が薬物の問題について相談することで、家族自身が健康な考え方や生活を取り戻し、当時者の治療や回復へのきっかけにしてください。
また、依存症の世代間連鎖が大きな問題ですが、その予防にも相談は有効です。

当事者本人が自分の依存症問題に気づき、向き合うことができるよう、家族は適度な距離を保ってください。
家族で抱え込まず、適切な相談機関を知ることから始めてみませんか。

※1 NA ナルコティックス・アノニマス(Narcotics Anonymous)は薬物によって大きな問題を抱えた仲間同士が薬物問題を解決したいと願う相互援助(自助グループ)の集まり

相談はどこにすれば良いのでしょうか

薬物依存症は、慢性かつ進行性の病気です。まず薬物の乱用から始まり、気分の変化を覚えることで依存症へと進行し、体や精神だけでなく、社会的問題も引き起こし支障をきたします。
薬物依存症になると使用を止めようと思っても自分自身ではコントロールできなくなり、その回復には長い時間が必要となります。
薬物問題に気づいた時点で、専門機関へ相談することが問題解決の第1歩となります。

当事者・家族等からの全般的な相談

依存症相談機関(各相談機関の情報提供、精神科医などによる相談や依存症家族教室を行っている機関もあります)

薬物の離脱症状や精神疾患の治療

精神科医療機関

依存症の専門治療

依存症専門医療機関

家族の自助組織

全国薬物依存症者家族連合会(やっかれん)

家族の自助グループ 

ナラノン

当事者・家族の自助グループ

ダルク

※まずは各機関にお問い合わせください。

「相談窓口と医療機関」はここをクリック

ご家族の体験談

市販薬依存の娘さんを持つ母親 学生時代は学業に身が入らず、高校を卒業したものの仕事もせず薬のことばかりを考えている娘のことを、何年間もの間どこにも相談できずにいました。困ってはいたのですがこのような問題をどこに相談していいのかも分からず、母親である私の育て方のせいだと自分を責めて、本人の言いなりになっていました。薬物の問題についてネット検索をしていて精神保健福祉センターの依存症家族教室を知り早速参加しました。これまでの経過から娘はこの先も変わらないだろう、私が一生をかけて面倒を見ていくのだと、ずっと辛くやるせない気持ちだったのですが、家族教室に参加し依存症について学ぶと共に、少しずつ参加された仲間とつらい気持ちを分かちあうこともできるようになりました。そして、娘の問題を解決するのは娘であり、私は自分の人生を考えて行こうと思えるようにもなりました。今は家族の自助グループに通い、そこで出会った仲間と話をしたり相談にのってもらい、自分らしい時間も持てるようになってきました。

家族が当事者から暴力を受けている、またはその恐れがある場合

家庭内で解決しようとすること、内密に対応することは問題行動がエスカレートする可能性があり、危険です。
当事者の暴力に対して、家族が最優先してとらなければならないのは、自分たちの安全確保です。
度々暴力的な行動が繰り返されるようであれば、事前に避難先の確保や警察に事情を知らせておく等の対応をしておく必要があります。
当事者のこうした行動は、薬物依存症にもとづくものであり、治療によって改善しますが、治療を勧めるのは当事者が落ち着いた状態の時に、冷静かつ穏やかにするべきです。
家族に危害が加えられたとき、その危険が高まった時には、とにかくその場から逃げてください。その上で、警察などに相談し、家族の取るべき行動について指示を受けてください。

薬物依存症の進行に伴う家族の状況について

巻き込まれの段階

薬物依存症は家族全体に影響を及ぼします。
家族の多くが気づかないうちに影響を受けてだんだん病んでいきます。
このことから依存症は「家族の病」とも言われています。
薬物依存症の進行に伴って見られる家族の機能、役割、態度の変化は右の図を参考にしてください。
家族に薬物依存症の当事者がいる家庭では、家族全体がこの危機を何とか乗り越えようとすることのみを目標に動くようになるので、家族それぞれの境界線が壊れ、自立性が保てなくなるという問題が生じます。
また、このような問題が家庭内で起きていることを周囲に知られたくないという思いから、秘密が多くなり、次第に社会から孤立するようになります。
このように薬物依存症は気づかないうちに家族全体の健康をも奪っていきます。

回復のために家族が動く段階

家族が相談機関につながったり、医療機関へ相談したり、家族会へつながるなど、家族自身に変化がみられるようになっていく時期です。
この時期の適切な対応が薬物依存症の回復にとってとても重要となります。

回復のために家族ができること

① 薬物依存症という病気について学ぶこと

薬物依存症は病気です。医学的、心理的側面から理解を深めるだけでなく、回復に有効な資源の情報を集めることも必要です。 また、薬物依存症は様々な犯罪や借金問題と関連することが多いので、法律に関する情報を得ることも役立ちます。

② 薬物依存症の当事者に対する適切な対応方法を身につけること

薬物依存症に対する具体的な対応の基本として「この対応は当事者の回復につながるだろうか」を絶えず意識して行動することが大切です。

③ 家族自身が元気を取り戻すこと

薬物依存症の当事者に巻き込まれて家族も大きく影響を受け、悩まされたり疲れたりします。正しい知識と対応方法を学ぶと共に、ご家族にも休息とこころのケアが必要です。

社会復帰または社会参加の段階

当事者への監視や干渉をやめ、家族自身の問題に取り組むことで、家族に新しい希望が生まれてきます。身体的にも精神的にも変化が現れ、ストレスに強くなり生き方への道が開けていきます。

※「ご家族の薬物問題でお悩みの方へ」―厚生労働省― 家族読本 引用 改変

【回復への指針】

全国薬物依存症家族連合会は、家族が回復するために以下のように10の「回復指針」を書いています。
参考にしてみてください。

1.自分(家族)自身が非常に困難な状況にあることを認識する
あなたはどうして良いかわからず、混乱し、いつものあなたではなくなっています。

2. 薬物依存の問題に関しては、手っ取り早くて簡単な回答や治療はないという事実を受け入れる
できるのは、当事者が回復への長い道のりを歩いていくのを見守り、支えることだけです。治療者や家族など、周りの人の 努力によって「治してあげる」ことは出来ないのです。

3. 当事者を支え、励ますように、自分のことも大切にすること。決して当時者のために自分を犠牲にしない
あなたにできることは、傷つき、疲れ果てた自分自身を癒やすことだけです。

4. 当事者に対しても自分に対しても責任追及はやめる
当事者を責めても、自分を責めても何の解決にもなりません。ただ気分が落ち込むだけです。どうしてこんなことになったのか?と考えるのも同じです。何がいけなかったのかを、あれこれ考えるだけですから。

5.自助グループやその他の治療・援助があることを、当事者に知らせても強制はしない
紹介や提案はしても、当事者がそれを求めて出かけていくかどうかは、彼(彼女)に任せましょう。第一、強制されてすぐに言うことを聞いてくれるようだったら、あなたはこれほど困っていないはずです。

6.過保護にならないこと(尻拭いをしないこと)
当事者は薬のせいで自分の身に何が起こっているのかを実感しなければ、薬物と手を切る気にはなりません。かわいそうだから、これ以上大変なことになってはいけないからと、本来は当事者が自分ですべきことを代わりに済ませてあげるのは、回復の妨げになるだけです(イネイブリング)。

「イネイブリング」はここをクリック

7.薬物のこと以外での会話ができるようになる
普通の会話がありますか?

8.当事者の薬物の使用をコントロールしようとしない
あなたに勝ち目はありません。おそらく無視されるか口論になり、結局あとに残るのは例のいや~な気分だけです。

9.前向きなコミュニケーションを心がける
「Iメッセージ(※2)」で話していますか?

10.ひとりぼっちにならない
自助グループなどに参加し、同じ悩みを持つ仲間と話し合うことは、とてもあなたを楽にしてくれるはずです。そこでは、あなたの周りで起こっていることについて、何の遠慮もなく話せます。そして、メンバーがあなたと同じような経験に対して、どのように対処しているかについて聞くこともできます。当事者を相手にして、薬物をやめさせるという無謀な戦いを仕掛けることにも、そろそろ疲れてきている自分に気付くのではないでしょうか。

※2 Iメッセージ(アイメッセージ)とは
「私」を主語にして、自分の気持ちや考え、希望等を表現する伝え方です。反対に「あなた」を主語にした表現が「ユーメッセージ」です。アイメッセージは相手の反発を受けにくい形で自分を主張できるので、相手の行動が変わる可能性が高まります。そしてなにより自分と相手との境界線をしっかり引いて、お互いを尊重する関係を作ることができるのがメリットです。使いこなすには練習が必要ですが、少しずつ試していきましょう。相手の行動が変わる可能性が高まります。そしてなにより自分と相手との境界線をしっかり引いて、お互いを尊重する関係を作ることができるのがメリットです。

ユーメッセージをアイメッセージに言い換えるとこんな感じになります

ユーメッセージ アイメッセージ
なんでまた薬に手を出したの? 薬を使ってないあなたと話がしたいわ
イライラして机たたいたり、大声出したり、いい加減にしろ 「そういう事をされるとビックリするし、怖いわ」
いつも夜遅く帰ってきて、なにも考えてないわね 早く帰ってきて少しでもあなたと話ができたらと思っているのよ

いかがでしょうか。普段の関りの中で少しずつ試して慣れていきましょう。

「関わり方のヒント」はここをクリック

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